JBVP一般社団法人 日本臨床獣医学フォーラム
Japanese Board of Veterinary Practitioners

犬の病気急性胃炎

原因

これは単一の疾患ではなく症候群なので原因は多数考えられる。まず食事性のものとして、腐った食物がある。また脂肪分が多いもの、非常に濃厚な食事は幼犬では胃炎を起こす。またある種の蛋白を受け付けなかったり、またはアレルギー反応を起こすこともある。さらに中毒として、様々な植物、薬物が考えられる。したがって急性の嘔吐がみられた場合にはまず、何を食べたか、食事を変更しなかったか、ごみあさりの可能性などを考える必要がある。さらにおもちゃなどの異物を飲み込んでも激しい刺激のため胃炎となる。その他薬物も原因となるので投薬との関係を調べるべきである。

症状

急に嘔吐がはじまり、食欲不振となり、食物内容を吐いている場合、原因で述べた何らかの原因が思い当たる場合、とりあえず急性胃炎と考えられる。通常ぐったりとはせず、あまり激しい病気の症状は示さないが、一部のものは水や電解質を高度に失い、危険な状態に陥るものもある。発熱や腹痛はまれである。

治療

急に犬が吐く場合、車酔いを除いておそらく急性胃腸炎によるものが一番多いと思われる。原因を取り除き、口から入る食事と水を24-36時間止めれば、通常1-5日で回復する。絶食後徐々に水を与え、次に流動食を与える。これにはカッテージチーズ1容にごはんを2容混ぜチキンブイヨンで若干の味をつけたものが適している。また脱水が激しいものでは(皮膚をつまんで戻りが悪い)病院で輸液療法を受ける必要がある。さらに嘔吐の激しいものでは、吐き止めの薬を与える。短時間で回復がみられない場合、あるいは嘔吐が非常に激しい場合には、おそらく診断が違っているので、慢性の嘔吐の原因となるその他の疾患について幅広い検査が必要となる。またパルボウイルス感染の初期にも食欲不振と嘔吐がまずみられて、1-4日して熱と下痢がみられるので、幼犬の場合にはこの病気も当然考えて、初期から様々な検査を行った方がよい。犬でも胃潰瘍はあるが薬物で胃を荒らした場合がほとんどで、人間のような真の精神的ストレスによるものはない。犬では激しい敗血症などのショックの場合に胃液の分泌が盛んになって潰瘍となるものもある。このような場合には原因に対する治療と胃粘膜の保護のための薬物療法を行う。