JBVP一般社団法人 日本臨床獣医学フォーラム
Japanese Board of Veterinary Practitioners

猫の病気尿が出ない

猫で尿が急に出なくなる病気としては、雄猫の下部尿路疾患(LUTD)、すなわち尿石症によって尿がでなくなるものが多くみられます。
これまで猫の臨床では猫泌尿器症候群(FUS)という用語が使用されてきましたが、尿道閉塞があるものとないものを含めて、血尿、排尿困難、頻尿などの症状を示すものをすべてFUSと広義に定義していた場合が多く、FUSという診断名では原因に対する考慮が欠如していて、正しい治療に結びつく病名ではないので、最近では原因を考慮した病名の方がよく使われます。
いわゆる"FUS"というものは、典型的には「2-4歳齢の去勢雄で、室内飼育、主にドライフードを食べている」というものです。猫の尿路結石は、ストルバイト(燐酸アンモニウムマグネシウム)、燐酸カルシウム、蓚酸カルシウム、尿酸および尿酸アンモニウム、シスチンなど多様な種類のミネラルからなっていますが、この中で圧倒的に多いのはストルバイトです。ストルバイト結石の予防には(felines/d)、低マグネシウムの食事、尿pHの酸性化、尿量増加が効果的と考えられています。
尿道閉塞の結果として尿の排泄が困難になると、腎後性窒素血症が起こり、急性腎不全の全身症状が発現します。したがって、治療に当たっては、腎後性であることを正しく診断し、閉塞部位・閉塞物質の特定、閉塞の解除、腎不全による全身症状の是正、短期的および長期的な再発防止を行う必要があります。
また、交通事故などで膀胱や尿管が破裂して尿が腹腔内にたまり、その結果尿は作れても出せない状態になって、次第に腎臓もダメージを受けることがあります。この場合も腎臓より後ろに問題があるため、腎後性腎不全と呼ばれます。腎臓より後ろの閉塞が高度であると、腎臓の組織自体が壊されるか、あるいは腎盂(尿管の始まりの部分)に尿が溜まってしまい、その結果腎臓は風船のように膨らんで、腎臓の本来の組織は薄くなってしまうこともあります。
腎臓より前に問題があるものを腎前性腎不全と呼びます。これは腎臓は働けるけれども、血液が来ない状態です。急な脱水や出血により血液の量が減ると、血液を濾過して尿を作る能力が低下します。またこの状態が続くと、腎臓自体も酸素と栄養の低下でダメージを受けてしまいます。
腎臓自体が急に障害される腎性腎不全としては、細菌性膀胱炎から菌が尿路を上がってくる感染症、腎盂腎炎があります。また、体の中の細菌感染巣から菌が腎臓に流れて化膿性腎炎をつくることもあります。したがって細菌の増殖巣である病変、たとえば激しい口内炎などは、早期に治しておく必要があります。
その他、毒物の摂取で腎臓が破壊される病気もあります。