JBVP一般社団法人 日本臨床獣医学フォーラム
Japanese Board of Veterinary Practitioners

犬の病気乳腺腫瘍

説明

犬の腫瘍で圧倒的に多いのは乳腺腫瘍である。犬の乳腺腫瘍の発生頻度は10万頭につき198.8頭でとくに雌犬の腫瘍としては最も多い(全腫瘍の半分)。発生年齢は10-11歳前後が多い。エストロジェンという卵巣から出るホルモンに支配されて腫瘍が発生するようなので、早くから避妊手術をした雌には発生がなくなる。

症状

乳腺部のしこり、大きな固まり、あるいは皮膚の炎症のようにみえるというのが代表的な症状。老犬でこのような症状があったらすぐに検査が必要。すべてが悪性の癌ではないが、悪性のものは早期発見しないと肺などに転移するので、できるだけ小さなうちに病院で正しい診断と処置を受けたほうがよい。

治療

予防法としては早期の避妊がある。アメリカでは最近犬の乳腺腫瘍がとても減っているのは雌犬はほとんどが若いうちに避妊手術を受けているからと言われている。すなわち、最初の発情までに避妊手術を受ければ乳腺腫瘍の発生は非常に少なくなるといわれている(危険度はふつうの犬の1/50にも下がる)。また最初の発情をむかえても、2回目の発情をむかえるまでに手術を受ければ減らせる(危険度はふつうの犬の1/3以下に下がる)。
避妊手術は、乳腺腫瘍以外にも、子宮や卵巣の病気も予防し、発情期に発生するさまざまなトラブルも防止でき、精神的にも行動的にも安定した最良の家庭犬をつくるので、犬の長寿と健康を望むなら、是非とも早期の避妊手術を行った方がよい。腫瘍が発生してしまった場合には手術による切除がすすめられる。もちろん、麻酔前検査として血液を検査し、さらに転移の有無をみるためX線検査も行われる。そして切除した腫瘍は必ず病理検査で悪性であるか良性であるかを診断し、その後の処置を決める。