JBVP一般社団法人 日本臨床獣医学フォーラム
Japanese Board of Veterinary Practitioners

犬の病気免疫介在性溶血性貧血

原因

赤血球表面に免疫抗体が結合して赤血球が破壊されるために起こる貧血。自分の赤血球そのものに免疫反応が向けられた場合と(自己免疫性溶血性貧血)、赤血球に付着している何らかの物質(たとえば薬物など)に対して免疫反応が起こっている場合がある。どちらも結果は同じで、赤血球の表面に抗体という免疫物質が結合することになる。そのような赤血球は脾臓や肝臓で破壊されたり、あるいは血管の中を流れながら破壊され、その結果貧血となる。

症状

2-8歳の犬に多く、雌では雄の3-4倍の発生率である。最初に気づく症状は、寒がる、食欲不振、落ちつきがない、運動時疲れる、脱力、ぐったりなどあまりこの病気だけに特徴的なものとはいえない。歯茎が白っぽい、白い犬で皮膚のピンク色がなくなるなども重大な貧血を表すサインである。まれに赤色尿や黄疸もみられる。また消化器症状(嘔吐、下痢)がみられることもある。また一部は免疫介在性の血小板減少症と一緒に発生するため、粘膜や皮下の点状出血を示すこともある。

治療

抗生物質投与、感染、腫瘍などに引き続いて起こるものと、原因不明で起こるものがあり、原因不明のものがおそらく真の自己免疫性と考えられる。原因があればそれを除くが、同時に免疫抑制剤を使った治療を行う。すぐに改善傾向がみられない場合は複数の薬を使ったり、輸血を行うこともある。ただしこの病気の犬では適合血がなかなかみつからないことも多い。非常に急性のものは救命率は低いが、通常のものでは回復するものが多い。ただし慢性化して完全に貧血が治らないものも中にはある。