JBVP一般社団法人 日本臨床獣医学フォーラム
Japanese Board of Veterinary Practitioners

猫の病気慢性腎不全

元気がなくなり、痩せてきて水をよく飲むようになった場合、慢性の腎臓病も疑われます。慢性腎不全は、腎臓の破壊が徐々に進行して、腎臓が小さくなり、体の老廃物を外に出す能力が低下した状態です。慢性腎不全では、一度壊された腎臓を元に戻すことはできません。慢性腎不全は高齢の猫によくみられる病気で、最初は残った腎臓の組織が余分に働いて正常に尿を作るようにしますが、それが続くとその組織も壊れてしまいます。このようにして、3/4の組織が破壊されてしまった状態が本当の腎不全です。さらに進行すると被毛の光沢が低下して、嘔吐や貧血などもみられるようになり、尿毒症(にょうどくしょう)の状態になります。また症状なしに徐々に進行していた時に、寒冷、騒音などのストレス、あるいは脱水(外に出ていって水も食事もとれずに数日うろついていたなど)が生じると、急に症状を出してぐったりすることもあります。まれに、腎臓にリンパ腫というリンパ球のがんが発生しても、結果は慢性腎不全となります。慢性腎不全は治すことのできない病気ですが、早期に発見して、病気の進行を遅らせることは可能です。まず以前に急性腎不全があった猫は、何らかの病気が腎臓で進行していると思って注意しましょう。猫は中年以降、症状がなくとも年1回から2回は健康チェックを受けて、尿の比重や血液化学検査の腎臓の値に注意します。尿の比重は慢性腎不全の早期発見に最もよいもので、1.035以下に低下していたら繰り返して測定し、常に低いものでは病気が進行中であると考えます。このような猫では、適切な食事管理を行い、ストレスを避けることにより、腎不全の進行を遅らせることも可能かもしれません。食事管理では、カロリーを十分に補給すること、適切な量の良質の蛋白を与えることがポイントです。また水も十分に与えるようにします。


腎臓病を疑う症状(急性と慢性では症状が違うので全く逆の症状もあります)

  • 多飲多尿
  • 無尿、乏尿
  • 食欲減少
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 被毛光沢の減少
  • 体重減少
  • 元気消失
  • 口腔内潰瘍
  • 口臭
  • 粘膜蒼白(貧血)
  • 腰部の痛み
  • 赤色尿

腎臓病の診断

病院ではまず腎臓病があるかどうかを検査して、それが急性か慢性か、急性ならば腎後性か腎性か腎前性かを診断する必要があります。これらですべて治療法や治療への反応が異なるためです。もちろん、交通事故であるとか落下であるとかの情報は区別のために重要な情報になります。さらにこれまでの尿の状態、飲水量、食欲なども重要です。検査としては、血液検査、血液化学検査、尿検査に加え、X線、造影、エコー検査なども必要になるかもしれません。また細菌感染が疑われる場合には尿の細菌培養もよく行われます。