JBVP一般社団法人 日本臨床獣医学フォーラム
Japanese Board of Veterinary Practitioners

猫の病気猫白血病ウイルス感染症(FeLV)

症状

猫白血病ウイルスという名前から想像できるとうり、白血病の原因となります。
しかし白血病だけでなく、貧血や免疫力の低下、流産、腎臓病などいろいろな病気の原因になり、感染・発病した猫のほとんどは3-4年以内に死亡します。
ただし感染しても治ってしまう猫もたくさんいることを覚えておく必要があります。これは感染したときの猫の年齢と深い関係があります。生まれたてで感染するとほぼ100%が持続感染になります。持続感染というのは常にウイルスが体のどこかで増えている状態をいいます。このような猫は発病しやすくほとんど死んでしまいます。
ところが離乳期を過ぎて感染した場合は約50%しか持続感染になりませんし、1歳以上の猫では10%程度しか持続感染になりません。このような性格のウイルスなので症状といってもひとことでは言い表せません。感染して最初の1-2カ月は、熱が出たり食欲がなかったりというように他のウイルス感染と同じような症状ですが、時に白血球が減ったり、血小板が減ったり、貧血が起こったりして、病院に行くような重い症状を出すこともあります。感染してから大体3-4週で、血液検査が陽性になります。
この時点では、病院では輸血を行ったり、インターフェロンで治療することもよくあります。そして、猫の免疫力が勝てば、その後血液検査は陰性になります。このような猫はもう猫白血病ウイルスには感染しません。ただしかなり長い間、骨髄にはわずかにウイルスが居続けるので、これから1年間は雌の場合、絶対に妊娠はさせないでください。妊娠で免疫が抑制気味になると、ウイルスが活性化する危険性もあるからです。
しかしながらそのうち、ウイルスは完全に消えてしまいます。ウイルス検査が一度陽性になってもあきらめないでください。最初に陽性と出ても、4カ月間はあきらめずに陰転することを祈るべきです。ただし4カ月たってまだ陽性の場合には、持続感染になってしまったと考えられます。
こうなるとウイルスが消える可能性は非常に少なくなってしまいますが、それでもまだあきらめてはいけません。重大な病気はもっと後になってから出るものです。したがって、感染しているというだけでは病気ではないのです。定期的に健康診断を受け、室内飼育を徹底させましょう。ウイルスは唾液の中にでるので、この猫は他の猫に対して感染源になることを覚えておいて下さい。 それからウイルス検査をしていない猫で、直りにくい慢性の病気、常に病気がち、貧血などがみられたらこのウイルスも疑って検査を受けるのがよいでしょう。

予防

ワクチンが発売されています。したがって外に出る猫にはワクチン接種が勧められます。また、感染源と接触させないというのも有効な予防法となります。感染した猫は唾液の中にウイルスを出すので、同居していて常になめ合っていれば感染することがあります。家の中に猫白血病ウイルスに感染した猫がいる場合には、他の猫にはワクチンを接種し、部屋を分けたりする必要があるでしょう。外にいる野良猫は感染しているものはそう多くなく、また弱いウイルスなのですれ違った位で感染する心配はありませんが、やはり危険はあるので抵抗力の弱い1歳未満の猫の外出は、ワクチン未接種では注意した方がよさそうです。人間や犬への危険はありません。治療としてウイルスを打ち負かす治療法はありませんが、この感染症のいろいろな病気の場合、ウイルスは裏で暗躍しているだけで、現在の重大な病気には直接関係していない場合も多いのです。ですからリンパ腫や白血病があれば化学療法を行いますし、激しい細菌感染があれば抗生物質の投与を行います。