JBVP一般社団法人 日本臨床獣医学フォーラム
Japanese Board of Veterinary Practitioners

猫の病気悪臭がする

猫の体のどこからか悪臭がする場合、まず考えなくてはならないのが化膿です。化膿というのは細菌の感染が起こって、そこで白血球が細菌と戦って膿(うみ)を作っている状態です。
このような化膿巣は体のどの部分にも起こりうるものですが、悪臭がするということは、どこか体の表面にそれがあるということです。耳の中から悪臭がして、中が湿っていたり、黒く汚れていれば、外耳炎その他の病気が考えられます。この病気は細菌感染が唯一の原因であることは比較的少なく、ダニなどの寄生虫が先に感染していたり、あるいは何らかの原因で耳の中の脂肪分泌が高まったりして、細菌が感染しやすくなることがあります。

次に口の中をみて、いつもよだれが出ていたり、ものを食べるとき痛がったりするのは口内炎の症状です。口の奥や歯ぐきが赤くただれていたり、組織が盛り上がっていたりすれば、そこに炎症があることがわかります。そして粘膜がはがれて、口の中の細菌が感染し、化膿が起こります。口内炎は免疫力の低下で起こる病気なので、口内炎だけを治すのではなく、なぜ口内炎が起こっているのかを確かめることが重要です。したがって、ウイルス検査などを行う必要があります。通常は抗生物質、ステロイドホルモン、その他の薬物で治療を行いますが、特に治療は長期にわたるので、ステロイドによる副作用にも注意を払わなくてはなりません。それから眼や鼻からの分泌液の場合もありますが、この部分では悪臭を放つような病気は少ないはずです。

次に皮膚を頭部、頚部、背部、腹部ですが、一部の猫はあごの部分ににきびのようなものができやすく、化膿も起こりやすいものです。傷があって悪臭がすればその部分が化膿しています。そして単なる傷としてみるよりも、なぜ傷ができたのか考えることが重要です。最初にかゆみがあって掻き崩したのか(寄生虫やアレルギー)、最初に塊ができたのか(腫瘍)、脂肪や角化物が溜まりやすいのか、など原因の究明が大切です。雌猫では乳腺を丹念にみる必要があります。ごつごつしたものがあってそこが破けて化膿していれば、乳腺癌に引き続く化膿が考えられます。

また単なる化膿にみえても、なぜ化膿が長く続くのかも重要な問題です。したがって、ここでも免疫力の低下について、ウイルス検査などが必要になることがあります。また口内炎がひどく、そこで細菌が多量に繁殖して、その口で皮膚をなめて激しい細菌感染になることもあります。また別の形の皮膚病として、皮膚が円形に脱毛して、やや盛り上がって赤い色をした病変がみられることもあります。そしてそのような場所に細菌感染が後から起こることがあります。この場合はアレルギーに関連した好酸球性プラークという病気がまず疑われます。

手足ではとくに肢端部と呼ばれる手足の先に化膿巣ができると、いつも歩いているために治りが悪い場所です。そして細菌感染の原因となる最初の病変もいくつか起こります。フットパッド(肉球)のあたりが腫れていないか、傷はないか観察します。

肛門の周囲と尾では、猫の肛門の回りには臭いを出す腺があるので、猫によってはそこが臭いものもあります。個体差もありますが、そこがあまり臭いようならば、感染が激しいことも考えられるので治療が必要です。そして最後に尾の傷についても確かめます。

猫の体の悪臭の原因は化膿であると書きましたが、本当の治療は、なぜ化膿が起こらなくてはならないのかを考えて行うべきでしょう。したがって、化膿より前にあった病気を突き止めることが大切です。このような真の原因には、やっかいな寄生虫、アレルギー、免疫不全や恐ろしい癌も含まれます。健康な猫は悪臭を放たないものです。したがって少しでも異常に気付いたら、病院での診察がすすめられます。