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肥満
猫で食事関連の異常としては肥満が最も多いものです.肥満の定義は,その猫の品種で年齢,性別を考えた理想体重より15%以上上回ったものです.しかしながら,雑種の猫の場合は理想体重というものはあるのでしょうか.また純血種でもこの理想体重がわからないと肥満かどうかは判定できないものでしょうか.実は他にもみただけで肥満とわかる方法はいくつかあります.ここではどのように肥満をみつけるか,なぜ肥満が悪いのか,なぜ肥満になるのか,どうしたら肥満をなくせるかを説明しましょう.

【肥満の見分け方】
猫の胸を篭のように包んでいる肋骨という骨が何本もあります.この骨の上の肉や脂肪の付き方で肥満がわかります.痩せている場合には,肋骨がでこぼこみえます.ただしこれがわかるのは毛が短い猫だけです.適正体重の場合には,肋骨は目でみて出っ張ってはいませんが,さわるとすぐにわかります.そして肥満の場合には,肋骨が手でさわってもなかなかわからないくらいに,肋骨の上を脂肪が厚く被っています.
そのほかの見分け方としては,食事中など座っているときに後ろから観察する方法があります.後ろからみて,すいかのように丸くみえたなら,多分肥満です.とくに縞のあるタビーの猫などは,すいかそっくりにみえます.また顔が横に広い,おなかが両側,または下側に出っ張っている,立っているときにおしりがやけに大きくみえる,歩くとおなかが横にゆれる,などが外観上の肥満のサインです.実際の体重からは,猫の品種毎に標準体重があるため,一概には肥満かどうか判定しにくいものですが,ごく一般的にいって,成猫の体重は4.5-5.0kg位までが標準といえるでしょう.

肥満に伴う病的な症状もあります.動きが鈍くなる,遊んでいてもすぐに疲れて横になる,呼吸が苦しそうなどの問題がそれです.ただしこれらは心臓病や肺の病気でもみられる症状で,心臓病で水が体内に溜まり気味になっても太ってみあることがあります.したがって,このような外観,あるいは症状がみられたならば病院に行って,その猫の標準体重を獣医さんに見積もってもらい,そして体重測定の結果や身体検査から,本当に肥満であるのか,肥満であれば何%位肥満なのか,どの程度の減量が必要なのかを判定してもらいましょう.

【肥満と病気】
肥満になると健康に悪いのは明らかです.まずもって,生命の維持には体の各部分に血液と酸素を送らなければならないわけですから,心臓も呼吸も体が大きくなったことで負担が増加します.とくに運動時には,酸素の要求が高まるために,呼吸が早くなったりします.また重くなった体を支える関節や骨に負担がかかるのは目にみえています.また体をまげるのがおっくうになると,グルーミングも少な目になり,皮膚や外部寄生虫の問題も増えます.その他,肥満が原因で糖尿病になることもあります.糖尿病の原因は多くの場合,血液の中のぶどう糖の濃度,すなわち血糖値を調節するインスリンというホルモンが出なくなるものですが,肥満の場合は脂肪が増えたために,インスリンは出ていても効き目が悪くなることが原因です.

【肥満の原因】
食事としてとったカロリーが常に多すぎて,全部使いきれないと,残った分は脂肪として蓄えられてしまいます.これが肥満の原因となります.このようにオーバーカロリーになる原因としては,食事が多すぎる,運動が少ないため消費量が少なくなるなどが考えられます.外を歩き回って事故にあったりする確率を下げ,長生きを願って雄の去勢を行いますが,活動が低下することによって,肥満が多くなるのも事実です.したがって,このような場合,カロリーコントロールやよく遊んでやることによって,肥満を防止することも必要でしょう.また去勢や避妊手術で体重が増えるのには,ホルモンバランスの影響もあるようです.特定の代謝の病気が原因で肥満になることもあります.これは病気によって代謝が下がり,あまり栄養を使わないようになるからです.しかし,肥満の原因のほとんどは,食事のとりすぎと運動不足です.

【減量作戦】
ここまでに書いたように,原因の多くは食事と運動であるので,この両面から減量にチャレンジするのがよいでしょう.といっても,かなり大変なことで,また正しく減量を行わないと,健康を損ねることにもなります.一般に,1kgの脂肪を削ろうと思ったら,7000カロリー以上使うか,あるいは7000カロリー以上食べ物を制限しなくてはならないのです.これは大変な努力が必要で,しかも徐々に行う必要があります.
運動による減量は飼い主の努力と猫の協力が必要なため,かなり難しいものですが,減量法としては安全です.基本的にはストレッチと走り回り,上下運動が効果的です.毎日一定時間遊んでやれる時間を作り,おもちゃを上の方に持ち上げて,猫がそれに対して体を伸ばすような遊び,紐や針金のついたおもちゃを引き回し,猫に追いかけさせる遊び,台のついたポストを床から天井まで立てて,猫に登らせるなどが効果的です.またハーネスがつけられる猫は外に連れて出て散歩させるのもよいでしょう.

食事療法による減量に当たっては,必ず獣医師の指導を受けてください.肥満の猫に急激な減量を行うと,脂肪肝という命にかかわる重大な病気が起こります.大体のガイドラインとしては20%減程度で食事を与え,徐々に減量して行きます.病院で目標体重を算出してもらい,その体重に何ヵ月もかけて徐々に到達するよう,毎月の目安を決めましょう.また療法食という病院でしか入手できないものには,あまりおなかをすかせないで,カロリーだけ制限して減量が行える優れた食事もあります.

[肥満のガイドライン]
  • 肋骨がさわれない
  • 後ろからみてすいかにみえる
  • おなかがゆさゆさゆれる
  • 顔もおしりもおなかも大きい
  • 抱いてずっしりと重い

[安全な減量]
  • 遊ばせて運動量を増やす
  • ゆっくりと根気よく
  • 急な食事制限は絶対しない
  • 食事療法は必ず獣医師に相談
  • 食事療法中はおやつはあげない

おなかに水が溜まって膨れている
おなかに水が溜まったものを腹水といいますが,猫で腹水が溜まる病気の代表的なものが猫伝染性腹膜炎(FIP)という病気です.これはコロナウイルスという弱いウイルスが原因ですが,猫では他の動物にみられないような激しい病気が起こるので大問題です.一般にコロナウイルスは,口や鼻から侵入して,気管や腸で増殖します.アルコールやせっけんで死んでしまう弱いウイルスですが,口から入って便に出たり,呼吸器系からせきで出たりするため,猫の集団では容易に広がり,多くの猫が感染してしまいます.

この病気には2つの型があって,おなかや胸に水がたまるウェットタイプと,おなかの中に塊ができて水はたまらないドライタイプがあります.その他まれに眼がにごったり,脳に感染が広がって「けいれん」や「まひ」などの神経症状を出す場合もあります.元気,食欲はなくなり,熱の為にぐったりすることもしばしばあり,体全体としては痩せてきます.また下痢が続くこともあります.また肝臓や腎臓が悪くなることも多いので,全身的に重い病気になりやすいものです.胸に起こった場合には胸膜炎となり,胸水が溜って肺が圧迫され,呼吸が苦しくなります.

一般に,発病した場合はその後徐々に病気は進行する傾向にあり,死亡率は非常に高いとされています.特に貧血と衰弱が進み,神経症状が出ていると最悪で,治療の望みはありません.免疫のバランスが崩れた状態で,激しいアレルギー反応が起こることが本当の病気の原因です.そしてそのアレルギー反応がFIPという病気そのものなのです.したがってこの病気は,ウイルスそのものが悪さをしているというよりも,体の防御反応のはずの免疫が異常に高まって,アレルギー反応を起こし,その結果死んでしまうような激しい障害となるのです.このような免疫のバランスの崩れはいろいろな原因で起こります.FIPウイルスと同時にネコ白血病ウイルス(FeLV)が感染した場合にはFIPが起こりやすくなります.しかしながら,もっと重大な要因はストレスでしょう.猫は集団で飼育されている場合,その密度が高いだけで激しいストレスを感じます.ストレス状態では副腎からコルチコステロイドというホルモンが出て,免疫をつかさどるリンパ球が少なくなったり,免疫系に何らかの変化が生じるようです.環境の悪い集団飼育の場合,ほとんどすべての猫にFIPウイルスの感染があると,年間で1割ほどの猫がFIPを発病して死んでゆきます.しかしながら,換気やトイレの掃除など飼育環境を改善し,猫1頭あたりが占める床面積を大きくし,あるいは猫が安心して休める場所を作ってやれば,この病気の発生率はどんどん小さくなるはずです.

病院ではこの病気の疑いがある場合,腹水を抜いて検査したり,血液検査で貧血やタンパクを調べたり,血液化学検査や尿検査で肝臓や腎臓の状態を調べます.FIPウイルスにかかっているかどうかは血清の抗体検査でわかりますが,これだけ感染している猫が多いと,どの猫も陽性となって病気の診断にはこれだけではあまり使えません.したがってFIPという病気の診断には,様々な症状や検査所見とあわせて抗体検査の結果が参考に使われます.診断が確定された場合には胸の水を抜いたりする対症療法と,免疫抑制剤を使った薬物療法が行われますが,まず治らない病気です.

その他腹水が溜まる病気としては,肝臓でアルブミンという蛋白が作れなくなった場合,あるいは尿の中にアルブミンが捨てられる糸球体腎炎という病気があります.この場合は,肝臓や腎臓の状態を調べる血液化学検査や,尿の検査が診断の決め手になります.

またおなかの中にリンパ腫や癌ができた場合にも腹水は溜まります.この場合には腹水の検査が重要な手がかりになります.さらに腸に穴があいて,激しい細菌性の腹膜炎になった場合にも水が溜まります.この場合にも,腹水の検査,細菌培養などで診断します.原因に応じて抗生物質治療を行ったり,あるいはおなかの中を開けることもあります.

削痩
ガリガリに痩せている状態を削痩と呼びます.
食欲不振が続いて削痩になる場合もあれば,食べているのに削痩になる場合もあります.糖尿病や肝臓病といった代謝性疾患,慢性腎不全のような疾患,あるいはネコ免疫不全ウイルス(FIV)感染による後天性免疫不全症候群(エイズ),白血病など,重大な疾患が考えられます.したがって血液検査,尿検査,血液化学検査,X線検査,ウイルス検査など,全身的な診断検査が必要になり,治療も診断に応じて全く異なるものになるでしょう.

鼻の頭や口の中の粘膜が白い
鼻の頭や口の中の粘膜が白い,運動すると疲れやすいという症状がみられたら貧血が疑われます.貧血とは,血液検査で赤血球数,血色素濃度,ヘマトクリットが低下している状態を指しています.貧血がみられた場合には,その原因を究明することが治療には不可欠です.まずもって,赤血球が壊されているのか,失われているのか,あるいは作られていないのかを区別することが重要です.また猫の貧血にはネコ白血病ウイルス(FeLV),ネコ免疫不全ウイルス(FIV)感染が関係していることが多いので,ウイルス検査も行います.

貧血の原因としては,赤血球を作る骨髄の機能には問題がない場合,出血によるもの,溶血(赤血球が破壊される)によるものがあります.出血ならば,どこかに出血がみられるはずです.また腸の中で出血があれば便がタール状の色をしていたり,赤い色をしていたりします.また膀胱などで出血していれば尿に赤い色がついて,尿の顕微鏡検査では尿の中に赤血球がみえるはずです.そのような出血の所見がなければ溶血と考えられます.溶血の原因としては,ヘモバルトネラ,ハインツ小体,FeLV感染による免疫性溶血性貧血などがよくあるものです. ヘモバルトネラ症では,ヘモバルトネラという小さな病原体が猫の赤血球に寄生して,その赤血球が体内で破壊されるために貧血が起こります.健康な猫ではふつう貧血は起こりませんが,ストレスやウイルス感染(FeLVやFIV)が加わると急に貧血になります.抗生物質でヘモバルトネラを退治すれば通常は回復がみられますが,ヘモバルトネラ症の発症要因となったものを探すことが重要です.

ハインツ小体性溶血性貧血の場合には,タマネギ,ニンニクなどの植物,あるいはアスピリン,アセトアミノフェンのような人間の風邪薬の成分で,赤血球の中のヘモグロビンが変性してハインツ小体が作られます.ハインツ小体は赤血球の表面から飛び出しているため,赤血球が血管内を通過するときに壊れ貧血になります.半生フードに入っているプロピレングリコールもハインツ小体を作らせる効果があるので,猫には与えない方がよいでしょう.原因が除かれれば,赤血球を作る能力には問題がないので徐々に治ります.

赤血球の生産が低下している貧血としては,軽度のものであれば,慢性炎症による貧血,慢性腎不全による貧血,あるいは慢性の小量づつの出血などによる鉄の欠乏があります.これらでは骨髄における赤血球生産が若干低下します.慢性炎症による貧血の場合には炎症の治療を優先させます.また慢性腎不全の場合には,腎不全の治療とともに,エリスロポイエチンという造血ホルモンと鉄剤の投与を行います.鉄の欠乏の場合には,まず慢性の出血があればそれを治し,ノミや寄生虫が多く寄生している場合には駆除を行って,鉄剤の投与が必要です.

また高度の貧血では,骨髄で赤血球生産が全く止まってしまったものが考えられます.これには白血病などの腫瘍細胞が骨髄を占領してしまった場合,赤血球を作る細胞がなくなってしまった場合,あるいは骨髄自体が全くなくなってしまった場合があります.これらの正しい鑑別のためには骨髄の検査が必要です.
このように貧血にはかなりの原因が存在し,それぞれ治療法,あるいは治療可能かどうかも異なります.また原因はなんであれ,高度の貧血の場合は輸血を行うこともあります.

かゆみ
かゆみというのは掻きたくなるような不快な感覚のことです.
人間ならばかゆいという感覚がよくわかって,しかもどこがどのくらいかゆいか,医師に正確に伝えることが可能ですが,動物はそれを訴えることができません.したがって,飼い主のみなさんが,「猫が掻いている」ということを発見して,おそらくかゆみがあるだろうと判断して病院に連れて行くことになります.ここが根本的に医学と獣医学の違うところなのです.すなわち,動物が掻く動作をしたとしても,本当にかゆみで掻いているのか,それともその他の不快な感覚(そこをやけどしてひりひりするなど)を取り払おうとして掻いているのか,一見わからないということです.したがって,猫のかゆみの原因を診断するには,ちょうど赤ん坊のかゆみを解決するように,難しい問題がたくさんあります.

かゆみを起こす原因はたくさんあります.したがって,原因をつきとめて,それを除くことが本当の治療です.かゆみ止めの薬を与えるだけでは本当の治療ではありません(もちろん狂ったようにかきむしっている場合にはかゆみ止めを与えることもありますが).原因の究明のためには,それが皮膚の病気なのか,全身の病気から皮膚がかゆいのかを鑑別しなくてはなりません.そのために,獣医師は数々の質問をすることがありますので,正しく答えられるようにしておくことが大切です.この中で,1)本当にかゆいのか,2)どのような皮膚病がみられるのか,3)どこがかゆいのか,4)他の動物や人間にかゆみはあるか,5)体の他の部分は悪くないか,というのが基本的に必要な情報です.表に示した質問事項に答えられるようにしてから病院に行きましょう.獣医師は,これらの問診に加え,皮膚にどのような変化(病変)がみられるか,皮膚のどの部分がかゆいか,寄生虫はいるかなどの情報を総合して診断を進めます.

皮膚の病気でかゆみを伴うものとして,外部寄生虫によるもの,かびによるもの,細菌によるものなど感染症がよくあります.感染症はとくに抵抗力のない若い猫にはよくみられます.外部寄生虫としてはカイセン,耳ダニ,ノミなどがあります.これらは,皮膚の一部を掻きとって検査することでよく発見されます.ノミの場合は,背中にぶつぶつができること,ノミがいなくても黒い糞がみられることでよくわかります.毛穴の中に寄生するデモデックス(ニキビダニ)という寄生虫も,皮膚を強く掻きとって検査します.また毛に感染するカビは皮膚糸状菌(ひふしじょうきん)といって,毛を抜いて顕微鏡で検査したり,カビの培養を行うとわかります.

感染症以外ではアレルギーがあります.猫ではアトピーという花粉症のような病気は比較的少ないのですが,食物アレルギーが多くみられます.頭からくび,あるいは全身に激しいかゆみがでて,ひどくかきむしるのが特徴です.この場合,最初に皮膚病があるのではなく,いきなり掻きはじめて,そのあと激しい皮膚の損傷になるのが特徴です.ノミの場合も,ノミ自身による病気というより,アレルギーでかゆみがでることが主体でしょう.したがって,ノミが1匹でもいればかゆみは出るものです.しかし,特徴的なぶつぶつがでるので,診断は比較的容易です.また蚊に刺されると,アレルギーで耳に同様のぶつぶつができてかゆくなることがあります.

アレルギー以外でも全身の病気から皮膚にかゆみがでることがあります.そういった場合,何にもないところをいきなり掻き出す場合も,何か皮膚に変化があってから掻き出す場合もあります.この場合全身の病気を鑑別するのに,血液検査,血液化学検査,レントゲン検査などの精密検査が必要になるかもしれません.また,皮膚の組織をとって顕微鏡で検査する生検を行う場合もあります.これらの病気には,腎臓病,肝臓病,糖尿病,栄養障害などに加え,腫瘍(しゅよう),自己免疫疾患や精神的な病気まで広く含まれます.
皮膚病では診断にも治療にも根気が必要です.場合によっては,家中のノミの駆除を行ったり,猫用の特別食を家で調理したりすることが必要になるかもしれません.それから,家庭内で勝手に薬を与えることは絶対にやめてください.人間用の薬が猫には効かないばかりか有害なこともあります.また動物病院以外でペット用の薬を買うのもやめた方がよいでしょう.診断をつけてから治療する,これが今日の獣医医療の基本です.

病院に行くかどうかの判断(1つでもあれば獣医師に相談を)
  • 激しく掻いている
  • 同居の動物も掻いている
  • 同居の人間もかゆい
  • 元気や食欲に変化がある
  • 飲水量が多い
  • 性格に変化があり,狂ったように掻く
  • 掻きむしって激しい傷がある,出血がある
  • 皮膚に明らかな病変がある
  • のみがいる
  • 薬物中毒の可能性がある
  • 何か薬物が皮膚についた可能性がある
  • 家で薬を飲ませた
  • 最近食事を変えた
  • いつも特定の季節にかゆくなる
皮膚病チェックリスト−病院で聞かれたら答えられますか
  • 皮膚にこれまでどんな変化がありましたか?
  • はじめて見られたのはいつですか?
  • 発生は急でしたか,徐々でしたか?
  • はじめて見られたのはどんな変化でしたか?
  • 最初に変化が見られたのは,体のどの部分でしたか?
  • この動物は生まれてからずっとこの地域に住んでいますか?
  • 飼っているのは屋内,屋外,両方のどれですか?
  • 家の中の飼育環境は? 動物専用のベッドですか? どこで寝ていますか?
  • 家の外の環境は? 芝生,草木,その他どんなものがありますか?
  • 皮膚病はずっとつづいていますか,たまに直ったり再発したりしますか?
  • 皮膚病の悪化と季節は関係あるようですか? もしそうならば説明してください
  • 皮膚や被毛を過度になめたり,噛んだり,擦ったり,掻いたりしますか?
  • とくに体の一部分を無理になめたり,噛んだり,擦ったり,掻いたりしますか?もしそうならば説明してください
  • 最初に気が付いたのはかゆみですか,それとも皮膚病があってから掻きだしたのですか?
  • 耳の病気は今までありましたか? もしそうならば説明してください
  • 他のペットを飼っていますか?
  • 他の同居ペットに同様の病気が見られますか?
  • 近所のペットに同様の病気が見られますか?
  • この動物の親兄弟などの家族に同様の病気が見られますか?
  • この動物に皮膚病が出てから,同居の人間に皮膚病が見られましたか?
  • この動物にはノミがいますか?
  • 家で飼っている動物にはノミがいますか?
  • ノミを退治すると皮膚も良くなるようでしたか?
  • これまでに受けた治療を説明してください.・薬品名,量,期間.
  • 治療を受けてよくなりましたか?
  • どの薬が一番効いたようでしたか?
  • 現在薬を使っていますか? 最後に使ったのはいつですか?
  • 家庭薬を何か使いましたか?
  • これまでに皮膚病とは関係ない病気をしましたか?
  • そのような病気で現在薬を使っていますか?
  • 皮膚病の発生と一緒に,健康状態,行動で変わったことはありますか?
  • 食事は何を食べていますか? メーカー,混合割合など.

脱毛
脱毛とは本来毛があるべきところの皮膚で,毛が部分的あるいは完全に,薄くなったりなくなることをいいます.脱毛を大きく分けると,炎症などの皮膚病変を伴って毛がなくなる場合と,炎症などは何もなくただ毛が薄くなったりなくなったりするものがあります.また,脱毛の原因として,毛が抜けてしまう病気,毛が生えなくなる病気に加え,かゆみのために,あるいは心理的な原因のために咬んだりなめたりして毛が抜ける(切れる)脱毛症もあります.一般に皮膚病があればその部分の毛がなくなることは多いので,それらについては皮膚病の診断を進めます.

 猫には長毛種と短毛種の他に,遺伝的に毛のない品種も存在します.代表的なものはスフィンクスです.またレックスという猫も遺伝的に毛が少なく,さらにシャム猫の一部でも毛が少ないものがあります.毛は皮膚の毛包という所で作られますが,毛の成長にはサイクルがあります.季節によって毛はよく成長し,生え代わります.冬から初夏にかけてと,秋から冬にかけて毛が生え代わるようで,このときに古い毛はよく抜け落ちます.毛が成長するのはこのような生え代わりの季節の数週間で,それ以外は長い休止期という成長を休んでいる時期になります.したがって,この成長期に入ることができない病気になれば一度抜けた毛は生えてきませんし,あるいは成長期が来るまでの間に何らかの原因で毛が抜けてしまえば(あるいは毎日猫が自分で抜いてしまえば),どちらの場合も脱毛になります.

脱毛の原因として,炎症を伴うものには細菌,真菌(かび),外部寄生虫,アレルギー,自己免疫疾患,腫瘍などがあります.また当初炎症を伴わなくてもかゆみを伴うものとして,やはりアレルギーが考えられます.そして一部の細菌や真菌による病気も,全く炎症を伴わないことがあるので,これらについても診断を行う必要があります.そして心因性脱毛と呼れるなめて毛を抜いてしまう脱毛症,また猫ではまれですがホルモン異常(内分泌疾患)もあります.さらに栄養性,ストレス性,代謝性など様々な原因が考えられます.

猫で多い脱毛のパターンは左右対称に毛が薄くなるものです.とくに内股から腹部にかけてや,わき腹などが左右とも冒されます.これは昔は内分泌性脱毛症と呼んでいたのですが,現在では様々な原因でこれが発生することがわかったため,対称性脱毛症と呼んでいます.猫はかゆみに対して激しくかく場合と,なめる場合があります.掻いた場合には激しい炎症が起こったりするのですぐにわかるのですが,かゆいためになめているというのはなかなか気付かれないことが多いのです.なめると,猫の舌が特にざらざらしていることから,毛が折れたり抜けたりします.原因としては,アトピー,食物アレルギー,ノミアレルギー,ツメダニ症,耳疥癬,腸内寄生虫アレルギーなど,かゆみが起こる病気が含まれます.また感染症として,細菌感染,皮膚糸状菌症,ニキビダニ症も含まれます.
さらに避妊,去勢済みの猫で腹や内股を中心に脱毛し,性ホルモンの失調が原因とされるものも存在するようです.さらに糖尿病,クッシング症候群(まれ),甲状腺機能低下症(まれ)などの代謝・内分泌疾患で発生することもあります. また,心因性脱毛症といって,何か気に入らないことがあって,毛をなめたり,抜いたりして脱毛を作ってしまう場合もあります.その場合左右対称に脱毛することもあれば,一部分だけを強くなめて,皮膚に傷や炎症を起こすこともあります.

かゆみがあってなめることによって,あるいは心理的な要因によってなめて毛が抜けてしまうのと,毛包に異常が起こって(内分性,代謝性,遺伝性)本当に脱毛しているのとの鑑別には毛を検査するとわかります.なめたり切ったりしている場合には,顕微鏡で毛先をみるとぷっつり切れています.またエリザベスカラーをつけてなめられないようにして,それ以上脱毛しなくなれば,自分でなめているのが原因でしょう.

それからの診断は,かゆみがあれば,アレルギー(ノミや食事がほとんど),感染症,外部寄生虫症などについて検討します.またかゆみがなくてなめている場合には,最近ストレスとなることがなかったか,同居の動物がいなくなったりしていないか,など行動学的な診断を進めることがあります.さらに原因がわからない場合には皮膚生検を行ったり,内分泌の検査を行ったりします.

歩き方の異常
猫の歩き方が異常という場合,いわゆる足を引きずる場合(跛行),麻痺(まひ),運動失調(体の動きに調和がとれない状態)などが含まれます.したがって,原因も骨や筋肉,関節などの異常から,末梢神経系,中枢神経系(脳や脊髄)まで様々です.

びっこの場合は,痛みのみでもおこりますし,また骨が骨折などで不安定な場合,関節の動きが悪くなったり,また神経の異常でもおこります.原因を追及して正しい治療に結び付けるためには,正しい診断が不可欠です.したがって,早めに病院で診察を受ける必要があります.すぐ病院に行くかどうかの判断は,表にしたがってください.

病院ではびっこの程度をまず等級分けして,考えられる原因を探ります.もちろん病院で歩かせて診断するのが基本なので,電話だけでは判断は難しいでしょう.第T級はほとんど気付かないような軽いもの,第U級ははっきりわかるびっこでも体重はある程度乗せられるもの,第V級は激しいものでバランスとりのためにわずかに足の先を地面につけるだけで体重はかけられないもの,第W級は全く体重はかけられず足をあげたままあるいはひきずるだけというものです.これらの等級によって考えるべき病気がある程度整理されます.たとえば,第T級だと軽いけが,筋肉の炎症などが原因ですが,第W級だと骨折,脱臼,異物が刺さった,蛇に咬まれたなど激しい障害が予想されます.

同時に,どのような経過でびっこになったかも,重要な情報です.これは飼い主が説明しなくてはなりません.たとえば,急に悪くなった場合はけがや感染が疑われます.これには,骨折,異物,靭帯の切断,筋肉の損傷,ねんざなどが含まれます.また慢性に徐々に進行した場合には,関節炎など運動器系の変性が進んでいること,あるいは骨の感染や腫瘍の進行を示しています.

問診を終えて歩き方をみた後は,触診が行われます.したがって,他人を恐がる猫の場合は,これらの検査が十分に行えない場合もあるかもしれません.触診の後にはよくX線(レントゲン)検査が行われます.その他の特殊検査としては,炎症や腫瘍が疑われる場合には針で組織を刺して細胞をとって顕微鏡で検査する細胞診が行われます.また免疫疾患が疑われる場合には血清の免疫学的検査が行われます.雄猫ではネコ白血病ウイルス(FeLV)とネコ巨細胞形成ウイルス(FeSFV)の関係した関節炎もあるため,ウイルス検査もしばしば行われます.そして深いところに何かがあるような場合には,切開して中を調べたり組織をとったり(生検)することもあります.

神経の病気が疑われる場合には,いろいろな神経学的検査を行って,病気の場所を捜します.ただし脳の中に病気があるということはわかっても(大脳と小脳のどちらかは症状でわかりますが),ふつうは脳の中までみることはできないので,診断がそれ以上進まないことがあります.神経系の病気では,感染症もあります.ネコ免疫不全ウイルス(FIV)感染,猫伝染性腹膜炎,トキソプラズマ症が代表的です.またFeLV感染に関連したリンパ腫が脊髄などに発生することもあります.これらの感染については血清検査で診断も可能です.また猫汎白血球減少症ウイルスが生まれる前に母親から胎子に感染すると,先天的に小脳が形成されていない猫になってしまいます.この場合は離乳期以降に猫が一人歩きするようになって,運動失調が明らかになります.

けがによる骨折や脱臼,ねんざがみられた場合の応急処置は,一部は家庭でもできますが,その目的はけがを治すことではなく,さらに傷が広がるのを防ぎ,痛みを和らげ,出血を止め,感染(化膿)を防ぐことです.したがって,骨折を治そうとしたり,傷をきれいにしてしまったりしないことが重要です.まず正しく動物を固定します.猫は毛布でくるむのがよいでしょう.痛みの激しい動物は咬むことがあるので注意します.高いところから落ちたなどで脊髄の損傷が疑われる場合(後ろ足の麻痺など),頭部,背中,前足を段ボールなどの担架に固定して病院に運びます.また足の骨折の場合はそえ木をあてて包帯を巻きますが,骨盤や肋骨,手足の上の方,肩胛骨などの骨折では包帯は使用しません.出血があれば圧迫包帯で止めます.また開いた傷口の上は,清潔なガーゼなどで保護します.またショックの状態にあるものでは,まず口の中をみて呼吸のじゃまになるものがないことを確認して,毛布で包み,温かくして病院に運びます.このときに必ず病院に電話して,緊急であることを伝えておきましょう.

猫の脊髄の損傷で一番多い原因は高所からの落下です.マンションのベランダに出る猫にはとくに注意が必要です.アメリカでの調査によると,2階以上から落ちた場合に骨折が多くなり,死ぬものもあります.しかしながら7階以上になると骨折も死亡も少なくなります.これは猫が手足を広げて空気抵抗を増し,また着地に備えての時間が十分とれるためだろうと考えられています.ただし顎をぶつけたり胸の中に空気がたまったり,あるいはショックの状態に陥ることも多いので,もちろんすぐに病院に連れて行くべきでしょう.脊髄が切れてしまうと時間が経てば経つほどつながらなくなるので,麻痺などの症状からそれが疑われる場合にはすぐに(必ず24時間以内に)病院に行くべきでしょう.

すぐ病院へ
  • 体のバランスがとれない(ふるえる,よろける,けいれん,立てない)
  • 大きな傷がある(骨がみえている)
  • 激しい痛みがある(激しく鳴く)
  • その日のうちに病院へ
  • 歩き方がおかしい(急におかしな歩き方をするようになった)
  • 手足が腫れている
  • 一晩様子をみてもよい
  • 足を引きずる(あまり続かない,痛みがない,あまりおかしな歩き方ではない)

悪臭がする
猫の体のどこからか悪臭がする場合,まず考えなくてはならないのが化膿です.化膿というのは細菌の感染が起こって,そこで白血球が細菌と戦って膿(うみ)を作っている状態です.
このような化膿巣は体のどの部分にも起こりうるものですが,悪臭がするということは,どこか体の表面にそれがあるということです.耳の中から悪臭がして,中が湿っていたり,黒く汚れていれば,外耳炎その他の病気が考えられます.この病気は細菌感染が唯一の原因であることは比較的少なく,ダニなどの寄生虫が先に感染していたり,あるいは何らかの原因で耳の中の脂肪分泌が高まったりして,細菌が感染しやすくなることがあります.

次に口の中をみて,いつもよだれが出ていたり,ものを食べるとき痛がったりするのは口内炎の症状です.口の奥や歯ぐきが赤くただれていたり,組織が盛り上がっていたりすれば,そこに炎症があることがわかります.そして粘膜がはがれて,口の中の細菌が感染し,化膿が起こります.口内炎は免疫力の低下で起こる病気なので,口内炎だけを治すのではなく,なぜ口内炎が起こっているのかを確かめることが重要です.したがって,ウイルス検査などを行う必要があります.通常は抗生物質,ステロイドホルモン,その他の薬物で治療を行いますが,特に治療は長期にわたるので,ステロイドによる副作用にも注意を払わなくてはなりません.それから眼や鼻からの分泌液の場合もありますが,この部分では悪臭を放つような病気は少ないはずです.

次に皮膚を頭部,頚部,背部,腹部ですが,一部の猫はあごの部分ににきびのようなものができやすく,化膿も起こりやすいものです.傷があって悪臭がすればその部分が化膿しています.そして単なる傷としてみるよりも,なぜ傷ができたのか考えることが重要です.最初にかゆみがあって掻き崩したのか(寄生虫やアレルギー),最初に塊ができたのか(腫瘍),脂肪や角化物が溜まりやすいのか,など原因の究明が大切です.雌猫では乳腺を丹念にみる必要があります.ごつごつしたものがあってそこが破けて化膿していれば,乳腺癌に引き続く化膿が考えられます.

また単なる化膿にみえても,なぜ化膿が長く続くのかも重要な問題です.したがって,ここでも免疫力の低下について,ウイルス検査などが必要になることがあります.また口内炎がひどく,そこで細菌が多量に繁殖して,その口で皮膚をなめて激しい細菌感染になることもあります.また別の形の皮膚病として,皮膚が円形に脱毛して,やや盛り上がって赤い色をした病変がみられることもあります.そしてそのような場所に細菌感染が後から起こることがあります.この場合はアレルギーに関連した好酸球性プラークという病気がまず疑われます.

手足ではとくに肢端部と呼ばれる手足の先に化膿巣ができると,いつも歩いているために治りが悪い場所です.そして細菌感染の原因となる最初の病変もいくつか起こります.フットパッド(肉球)のあたりが腫れていないか,傷はないか観察します.

肛門の周囲と尾では,猫の肛門の回りには臭いを出す腺があるので,猫によってはそこが臭いものもあります.個体差もありますが,そこがあまり臭いようならば,感染が激しいことも考えられるので治療が必要です.そして最後に尾の傷についても確かめます.

猫の体の悪臭の原因は化膿であると書きましたが,本当の治療は,なぜ化膿が起こらなくてはならないのかを考えて行うべきでしょう.したがって,化膿より前にあった病気を突き止めることが大切です.このような真の原因には,やっかいな寄生虫,アレルギー,免疫不全や恐ろしい癌も含まれます.健康な猫は悪臭を放たないものです.したがって少しでも異常に気付いたら,病院での診察がすすめられます.

猫の腫瘍
一般に腫瘍は老齢疾患と考えられていますが、猫ではウイルスが原因の腫瘍も多くあるため、若い動物にも腫瘍発生のピークがあります。
それから猫の腫瘍の約80%が悪性腫瘍であることも特徴です。悪性腫瘍は一般にガンとも呼ばれますが、無制限に増殖し、周囲や遠い器官に広がったり転移したりします。そして切っても再発したり、最初の手当が手遅れだと、ほとんどの場合動物を死に至らしめます。
良性の腫瘍は、転移をおこしたり、切りとるのが難しいように広がったりすることはないのですが、場合によっては手術ができない場所にできて(脳腫瘍など)、機能障害のために動物が死ぬこともあります。猫で多い腫瘍は、第一がリンパ肉腫、第二が白血病、第三に皮膚の扁平上皮ガンと乳腺のガンが並んでいます。部位別でみるとリンパ腺と血液の腫瘍を除くと、皮膚にできるものが多いことがわかります。原因をみると、リンパ肉腫や白血病のほとんどは猫白血病ウイルスによるもの、その他は老化にともなっておこるものと考えられますが、特殊な例では太陽光線の強い場所に住む白猫には、耳や鼻に紫外線によるダメージが原因の扁平上皮ガンが多いといわれています。カリフォルニアでは耳にサンスクリーンをぬって外出する猫もいます。
早期診断 腫瘍の治療は早く手を打つことがかんじんです。このために、よく猫の体を常にさわり、異常な膨らみ、腹部を痛がる、皮膚のいぼや直りにくい皮膚病などに注意を払いましょう。そして少しでも異常がみられたら、病院で精密検査を受けるべきです。腫瘍の診断で最も信頼できるものは、バイオプシー(生検)で組織や細胞をとって顕微鏡検査をすることです。したがって腫瘍を疑うようなものができた場合、とくに急速に大きくなったような場合には、すぐに検査を行なうべきでしょう。

【治療】
切りとれるものは早めに切りとることが最良の治療です。ところがリンパ肉腫(リンパ球のガン)や白血病(白血球のガン)のように、切りとることのできない腫瘍が猫では多いため、抗ガン剤という薬を使った治療がよく行なわれます。しかしながら現在までに開発された薬では、一時的によくなって延命効果はみられますが、完全に治ることはあまりありません。

【予防】
猫で一番多いリンパ系のガンや白血病は、ほとんどが猫白血病ウイルス感染の結果おこるものなので、このウイルスに感染しないように注意すれば、危険も少ないでしょう。
白い猫は強い太陽光線の下で日光浴をさせないようにした方がよいでしょう。また雌猫の乳腺ガンは、避妊手術済みのものには少ないことが知られています。
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