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ウイルス疾患関連 文献(要約): 町田晴市(町田動物病院),栗田吾郎(栗田動物病院),草野道夫(草野動物病院)
免疫抑制された猫における日和見感染症(レトロウイルスに感染した猫の日和見感染症)
Michael R. Lappin, DVM, PhD, DACVIM:AMERICAN ANIMAL HOSPITAL ASSOCIATION
1997 Scientific Proceedings P92-


猫白血病ウイルス(FeLV)と猫免疫不全ウイルス(FIV)は,免疫不全を起こすレトロウイルスである.FeLVと関連した免疫不全症候群は,二次的にTリンパ球の消耗(CD4+とCD8+リンパ球の両方)または機能不全と好中球増加症または好中球機能不全のどちらかを起こす.FIVは,結果的にCD4+リンパ球数とマイトジェンに対する反応をゆっくり落下させ,インターロイキン産生を減少させる.そして体液性免疫反応,好中球とナチュラルキラー細胞の機能を障害する.さらに,ヘモバルトネラフェリス,トキソプラズマ,猫ヘルペスウイルス-1と猫カリシウイルスとの複合感染は,よりFIVの免疫不全を強化して臨床症状をさらに悪化させる.よってCD4+T-リンパ球数のように免疫機能を臨床家がルーチンに測定できるようになれば,個々のレトロウイルス陽性猫における免疫不全状態を確認できる可能性がある.その結果が治療に生かされる.
レトロウイルス感染症の猫において臨床的に対象となる疾患および2次感染症には,口内炎,歯周囲炎,サルモネラ症,ジアルジア鞭毛虫症,クリプトコッカス症,腸内細菌過剰増殖症,クリプトスポリジウム症,コクシジウム症,蠕虫類による感染症,トキソプラズマ症,黄疸を起こす疾患,リンパ腫,クリプトコッカスとトキソプラズマなどによる2次性呼吸器疾患,再発性皮膚炎,慢性の膿瘍と外耳炎,全身性毛包虫症,猫疥癬,ポックスウイルス症,皮膚糸状菌症,ミコバクテリア症,猫伝染性腹膜炎ウイルス,汎血球減少症,赤芽球系の異形成,免疫介在性溶血貧血,糸球体腎炎,軟骨の外骨腫症などである.
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急性気道疾患または慢性眼疾患の猫におけるヘルペスウイルス-1感染症の診断に対する血清学的,ウイルス検出法の評価
Maggs, D,J.,Lappin,M,R., James K. Collins,J,K., et al.:
J.Am.Vet.Med.Assoc.1999 .214.No4


46頭の健康な猫,17頭のFHV-1の初期感染による急性気道疾患症状のある猫,38頭のFHV-1感染の慢性眼疾患のある猫からウイルス分離のための結膜スワブ,免疫蛍光抗体分析検査のための結膜掻爬 ,血清中和反応または酵素標識免疫吸着測定法のための静脈血が採取され,猫のヘルペスウイルス-1感染症の診断に対するウイルス分離(Vl),免疫蛍光抗体分析(lFA),血清中和反応(SN),酵素標識免疫吸着測定法(ELISA) を測定した.臨床的に健康な猫のうち38頭(82.6%)の猫がワクチン接種されており,ワクチン接種後の平均は8.2カ月であった(範囲,1-28カ月).急性気道疾患の猫は2頭だけであり,慢性眼疾患の猫は8頭(21.1%)だけであった.ワクチン接種後の平均は急性気道疾患の猫では9.5カ月(範囲,7-12カ月)であり,慢性眼疾患の猫の グループでは20.3カ月(範囲,0.5-132カ月)であった.全体のFHV-1血清陽性率は,酵素免疫吸着測定法では97%であり血清中和反応では66%であった.この高い陽性率は,ワクチン接種による影響を受けているためでありFHV-1に関連した疾患との関連性は認められなかった.健康な猫でのVlとIFAはそれぞれ0.9%,28.30%,FHV-1と関連した疾患を持つ猫では18.2%,33.30%であった.FHV-1の免疫蛍光法またはウイルス分離は,FHV-1感染の臨床診断に使用でき,それらが陰性であれば病因としてFHV-1を除外できる.
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致死的な髄膜脳炎を起こした犬のボルナ病(BVD)の1例
WEISSENBOCK,H., NOWOTNY,N.,CAPLAZI,P.,KOLODZIEJEK,J.at all
J. Clin. Microbiol.July 1998, p. 2127-2130


この報告は,初めての犬のボルナ病の症例報告である.
犬の病因不明の非化膿性脳炎の症例を再度調査したところ,進行性の神経症状を持つオーストリア 西部の2歳齢,雌,ハスキー犬にBVDが疑われた.この犬は,その症状から当初狂犬病またはジステンパーが疑われたので安楽死されたものであった.病理組織学的検査では,核内に1つまたはいくつかの好酸性イエスト小体を有するニューロンが確認され,BVDが疑われた.今回,免疫学的組織学的検査,ハイブリディゼーション,PCRにより,この犬の脳組織内にボルナ病ウイルス (BDV)抗原が証明された.PCRによる核酸配列が,既報のBDV核酸配列と94-98%の相同性を示した.免疫組織学的化学染色 (IHC)には,アビジン - ビオチン法とモノクローナル抗体BO18を使用した.それは,BDVの38/40-kDa protein(p38/40) に対して直接作用するものである.BVDの2頭の馬から採取した脳組織を陽性コントロールとし,正常な犬と様々な非化膿性脳炎(すなわち,狂犬病,ジステンパー,ダニ媒介脳炎,病因不明の症例)の犬から採取した脳組織を陰性コントロールとした.この結果,本症例の犬では,激しい脳炎のある部位(梨状葉,新皮質 の中央- 基底外測,基底核、海馬、視床下部と中脳)に免疫反応が強く出た.よって,BVDの流行地域(オーストリアなど)では,BVDを神経症状のある犬の鑑別診断リストに入れておく必要があり,病因が分からない非化膿性脳炎の犬ではBVD抗原または核酸のチェックが必要である.
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スウェーデンにおける猫のボルナ病のアンケートによる症例の比較調査
Berg,A,L.,Reid-Smith,R.,Larsson,M.,Bonnett,B.
Vet. Rec. ( 1998) 142, 715-717


ボルナ病ウイルス(BDV)は,非常に神経親和性が強い1本鎖のRNAウイルスであり, 馬,羊,牛,猫などの多くの動物種に行動異常と運動神経障害を起こすウイルスである(Ludwig 1988, Bode1994, Briese1994, Cubitt1994). Lundgrenは,猫の後肢不全麻痺と非化膿性脳炎を呈する原因不明の疾患staggeringdisease(SD)をBDV感染によるものであることを証明した(1995).また, オーストリア (Nowotny ,Weissenbdck 1995),ドイツ(Lundgren 1993),日本の猫おいてウイルスの特異抗体が確認されている(中村ら1996). ヨーロッパ とアメリカ合衆国 における人の神経障害患者においてウイルスに対する特異抗体が発見されており, Bode らがウイルスを分離した( 1996).
今回,174頭のスウェーデン猫においてアンケートによる症例の比較調査を行い,猫ボルナ病に対する危険性を調査した.その発症は, 田舎や山林地域の屋外で生活している猫, 雌よりも雄の猫,避妊していない猫に感染の危険性が認められた.また,ネズミ,兎,猿などでは,ウイルスの実験感染が可能であり(Ludwig 1988),今回の調査でもネズミを捕っている猫での発生率も高かったので,齧歯類がボルナ病ウイルスキャリアの可能性がある(猫同士の感染は,簡単に起こらないようである).
人のBVDと猫をはじめとする動物種のBVDが同じウイルスなのか,また人への感染経路など詳しい研究が望まれる.
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Risk factors forfeline infectious peritonitis among cats in
multiple-cat environments with endemic feline enteric coronaviru
猫腸コロナウイルス (FECV) によって汚染されている多頭飼育猫の環境における猫伝染性腹膜炎(FIP)の危険因子
Foley,J,E., Poland,A., Carlson,J., Pedersen,N,C. J Am Vet Med Assoc, 1997;210:1313-1319


FIPの発症を起こす危険因子は現在確認できていないが,PedersenらはFIPと血清学的に交叉反応する疾患が発症要因ではないかと示唆している. Polandらは,FIPVは FECVの特定株が突然変異したウイルスであり,FECVに関連してFIPが発症すると報告している.この調査の目的は,7カ所のキャテリー( 個人のブリーダー)と1カ所の動物避難所(animal shelters)を1年間観察し,猫伝染性腹膜炎の発生率に影響する遺伝的要因以外の危険因子を探すことであった.調査対象となった猫の総数は275頭であり,そのうちFIPによって死亡した猫は24頭であった.その結果,個々の猫に対するリスクは, 蜜飼いなどの重度のストレスがある場合, 腸コロナウイルス(FECV)に対する感受性が高い場合, FECVに感染している場合, 糞便中にFECVを頻回に排泄している場合,免疫機能が低下している場合,併発症が存在する場合では増加した. また,キャテリーなどからコロナウイルスを排除するには,コロナウイルスに対して感受性のある猫と感染猫を他の場所に移すことであろう.
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