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| 消化器疾患関連 |
文献(要約):町田晴市(町田動物病院) |
1.オクラホマ州における消化管ピチウム症
Helman,R,G.,Oliver,J,III.
J Am ..Anim. Hosp. Assoc 1999;35:111-114.
犬における腸と皮膚の真菌感染症は,真菌の日和見感染によって起こる風土病(メキシコ湾沿岸に最も多く見られる)と考えられており,”フィコミコーシス(ムコール菌症)”と呼ばれていた.フィコミコーシスとは,ピチウムグラシル, ハイフォミセス・デストルエンス ,ケカビ目の病原菌によって引き起こされた感染症である.現在,”フィコミコーシス”は,ピチウム症と接合菌症に分類されている.ピチウム症は, 水生の卵菌類である Pythium insidiosum(分類は,卵菌類)によって起こり,馬と犬の皮膚疾患と腸疾患の報告がある.皮膚炎は,この病原菌が生育する汚い水に長い間接触することによって引き起こされる.腸感染の正確な機序は不明であるが,病原菌の経口摂取と粘膜の傷を通して消化管壁に侵入すると考えられている.オクラホマ 州では,腸管のピチウム症が9頭の犬で診断されており,今回再評価した.基本的な病理組織学的変化は,好酸球主体の白血球浸潤,消化管の肉芽腫,化膿性肉芽腫所見とゴモリ鍍銀染色 法または過ヨウ素酸シッフ染色による菌糸の確認であった.今回ホルマリン,パラフィン処理された組織を使用してピチウムを染色する免疫化学染色をルイジアナ州立大学獣医学部で行ったところ,すべての症例は陽性であった。(よって,以前に診断された9頭の犬のピチウム症が,確定診断された.)
これら9頭の犬すべてが,オクラホマ州 原産であり,州外に出かけたことがなかったが,農場の池で水を飲んでいた記載がある.本来ピチウムは冬でも温暖な地方の池,湖,河で生息するが(寒冷で(5℃)顕著に減少し,凍結で死滅する),オクラホマ州のように降水量が多い地方の池では冬に表面が凍結しても深いところで生存している可能性がある.
よって,地理的,気候的条件が同じ合衆国の地域では,ピチウムが生存することが予想されので,進行性の削痩,消化器症状,消化管の顕著な肥厚のある犬ではピチウム症を鑑別診断に加えるべきである.また,本疾患の予後が悪いのは,診断が成された時には進行しており,外科切除後に再発する傾向があるためである.よって獣医師は,診断を依頼する検査機関がピチウム確認できるかどうか調べておく必要がある. |
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Esophageal Motility Dysfunction A Study of 44 Cases in Cats:
2.食道の運動性機能不全を呈した猫44例の調査結果
Moses,L.,Harpster, N,K.,Beck,K,A.,et al.
J Am Anim Hosp Assoc 2000;36:309-12.
ボストンエンジェルメモリアルアニマルホスピタルにおいて1990年から1996年の間に食道の運動性障害が疑われた猫44症例を再考察した.正常な食道運動は第2次蠕動後にバリウムが完全に食道から排泄されるので,機能不全症は第1次食道蠕動の後期または2次性蠕動期にバリウムの停滞がある場合と定義した.
食道の運動機能不全は,先天性または後天性,一次性または二次性に分類される. 臨床症状は,上部消化管症状(嘔吐,吐出,嚥下困難)と上部気道疾患症状(咳,呼吸困・Cくしゃみ,異常な呼吸音,鼻水,レントゲン上の気管支性肺炎など)であった. 検査は主にバリウムによる食道造影法(透視も含む)であり,診断は放射線専門医と臨床医の両者の同意によって行われた.原因は,43%が特発性と考えられ,57%が先天性または食道の機能不全を起こす疾患(胃食道逆流症,食道裂孔ヘルニア,食道狭窄,右大動脈遺残,縦隔のマス,重症筋無力症など)によるものであった.治療は,78%が内科療法で治療され(スクラルフェート,H2リセプター拮抗薬,メトクロプラミド,シサプリドによるH道炎の防止と治療,食道の緊張緩和を目的とした),臨床的に改善された. 食道狭窄,喉頭麻痺,右大動脈弓遺残では,外科手術が行われ,臨床症状の改善または消失が認められた.但し,内科療法後および外科療法後ともに,食道造影検査が行われていなかった.発生率は,猫の全疾患中0.05%であった. 年齢は様々であり,性差も特になく,グレードと臨床症状との関連性も認められなかった.
著者は,説明の付かない上部消化管疾患または上部気道疾患症状(特に再発例)のある猫では食道撮影を推奨している.その検査により, 従来の報告よりも食道の運動性機能不全の発生率が高く,また 治療後の再検査を行うことによりその予後が変化する.さらに,巨大食道症を先天性または後天性に分類していないが,従来の報告よりも多いのではなかと指摘している. |
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Management Protocol for Acute Gastric Dilatation- Volvulus Syndrome in Dogs
3.犬の急性胃拡張-捻転症候群のための管理計画
Brockman, D,J .,Holt,D,E.
Compend.Contin.Educ.Pract.Vet.2000.22.11:1025-1034.
犬の急性胃拡張 - 捻転( GDV )は,緊急の内科療法と外科療法を必要とし,特に集中的な管理が重要である.GVDの合併症には,持続的な低血圧症,循環血液量の減少と低酸素症症,全身の炎症性反応,腹膜炎,肺炎、膵炎,水腫などがあり,死因となりうる.従って,特に腹部の膨満などの臨床的徴候がある場合には,問診からその前兆症状の有無を確認し,毛細管再充填時間( CRT )や血圧の測定などを含む身体検査を厳密に行う.次に,血液検査(CBC),血液化学検査,血液凝固検査とレントゲン検査を行う.レントゲン検査によって,捻転を確定診断し,その他の検査から全身状態を評価する.診断が確定できたならば,合併症の予防,またはそれらの治療のために,点滴を行う.次に,胃を減圧するために,馬用の経鼻胃チューブなどを口から胃に挿ヌするか,套管針を利用して経皮的に挿管する.外科手術は,胃を正常な位置に整復し,胃と脾臓の壊死部を切除する.胃の壊死部の切除は,炎症反応や内毒素の放出を左右するので,健康な組織を含めて行う.胃の部分切除には,ステイプル吻合器surgical stapling devicesが利用できるが,thoracoabdominal stapler (TA-90, US Surgical)が有用である.脾臓は摘出するべきである.捻転の再発を防ぐためにフォーリーカテーテルのバルーンなどを利用した胃腹壁固定術gastropexyが良いであろう.術後は,点滴を十分に行い,必要に応じてメトクロプラミドや鎮痛剤を加える.術後48時間以内のチューブ周囲からの胃内容の漏れは,特に注意すべきであり,確認されたなら全身麻酔下で再度入れ直すべきである.
術前から術後にかけて最も重要な治療の一つである点滴の組成は,電解質測定などによって決定する.また,十分に点滴を行っているにもかかわらず,血圧の低下が持続する場合には,その原因を追及するが予後は要注意である.この疾患には,不整脈がみられる事が多いので,心電図を継続して記録し,その原因を考慮し,治療すべきである.
GDVに対する以上の管理をすることによって,15-20%と高率の生存率を達成できるであろう. |
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Esophagitis and benign esophageal strictures
4.食道炎と良性の食道狭窄
Weyrauch,E,A.,Willard,M,D.
Compend.Contin.Educ.Pract.Vet.1998.20.2:203-210.
食道炎および食道狭窄は,小動物医療では従来の報告よりも多く,集中的な治療が必要な疾患である.食道炎は胃酸が食道に逆流したために起こる表在性の炎症であり,食道狭窄は粘膜固有層および粘膜筋板に重度の炎症が波及し,コラーゲン形成が起こることによって発症する.その病因には,
全身麻酔による下部食道括約筋が弛緩,24時間以上の絶食による胃酸の酸性化の促進, 薬剤(アトロピン,キシラジンなど)などである.
その他の原因には,異物,外傷,慢性的な嘔吐,食餌の内容,解剖学的異常(裂孔ヘルニア)などがある.そして,
下部食道括約筋の緊張度,逆流した内容物またはその量,食道粘膜自体の能力などによって重症度が異なる.
臨床症状としては,炎症の程度および狭窄部位と大きさに依存するが,食欲不振,嚥下困難,吐出,嘔吐などがある.診断は,内視鏡が最も正確である.そして,特に
増殖性病変,免疫抑制剤の使用などによる真菌感染の可能性がある場合,腫瘍が予想される場合,治療に反応しない場合では生検が必要である.治療は,徐々に大きな消息子bougieおよびバルーンを使用して狭窄部を拡張する.報告によれば,この拡張術を複数回行っている.外科手術は侵襲性が高いので最終的な方法である.また,胃酸の分泌減少,下部食道括約筋と胃の運動を促進するH2ブロッカー(シメチジン,ラニチジン,ファモチジン),プロトンポンプ阻害剤(オメプラゾール,ランソプラゾール)およびプロキナーゼ製剤(メトクロプラミド,シサプリド)の長期投与が有用である.発熱または感染がある以外は,抗生物質は必要でない.胃チューブは,衰弱している患者,薬剤の投与に有用である. |
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Canine and feline megaesophagus
5.犬と猫の巨大食道症
Mears,E,A.,Jenkins,C,C.
Compend.Contin.Educ.Pract.Vet.1997.19.3:313-326.
巨大食道症は,食道への不完全な神経分布による運動機能障害を伴う食道拡張疾患である.犬では先天性および後天性または成犬の特発性巨大食道症に分類され,先天性疾患には常染色体劣性遺伝および優性遺伝がある. 猫では非常にまれな疾患であり,シャム猫およびその雑種で遺伝するようである.後天性巨大食道症は,中枢性神経系疾患,末梢神経疾患,神経筋肉接合部疾患(代表的疾患は重症筋無力症であるが,先天性のものもある),筋肉疾患,内分泌疾患(副腎皮質機能低下.甲状腺機能低下症に関しては論争中である)と炎症性疾患(血管輪異常などの閉塞性疾患をも含む)の結果として発症することがある.診断は,特異的臨床徴候,身体検査またはバリウム造影検査による食道拡張の確認,マノメトリまたは核シンチグラフィーnuclear scintigraphyによる運動性の評価と筋肉の病理組織学的検査などによって総合的に行われる.そしてそれぞれの要因となる疾患に対する診断法が有用である.治療法および管理法としては,食事に対する支持療法,外科手術による食道の再建術と食道の運動性を補正する内科療法が必要である. |
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