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猫の疾患関連 文献(要約):町田晴市(町田動物病院),保坂 敏(ほさか動物病院),長江秀之(ナガエ動物病院),斉藤邦史(斉藤動物病院)
猫の肝疾患
Taboada,J.
Am.. Anim.Hosp.Assoc.1999. Scientific Presentations of the 66th Annual
Meeting:230-233


猫の肝リピドーシスは,肝臓の脂質代謝障害によってトリグリセライドが多量に肝細胞に蓄積する多発疾患である.原因には,特発性,糖尿病,長期の絶食、過度の栄養、甲状腺機能亢進症,上皮小体機能亢進などがある.特異的な臨床症状は無く,既往歴には肥満があり,身体検査では筋肉の衰弱が見られることがある.血液化学検査では,TBil,ALP, ALT, AST, GGTの増加などがみられる.腹部レントゲン写真では肝腫大,エコー検査では肝臓のエコー濃度の増加が見られることがある.確定診断は,針吸引生検または肝生検によって重度の空胞化した肝細胞を確認する.積極的な治療が必要で,基礎疾患がある場合にはそれについて行う.特発性の場合には対症療法と肝性脳症に対する治療を行う.出血傾向がある場合には,ビタミンK1が投与される.また,栄養のサポートが最も重要であり,各種強制給餌法と食欲増進剤の投与によって,総カロリー80-100 Kcal / kg /日を維持する.そして,タウリン,ビタミン剤などを添加する.猫の胆管肝炎症候群は,炎症性肝胆道系障害に関連した症候群であり,門脈領域の明瞭な炎症性細胞の浸潤が特徴である.そして,病理組織学的に,化膿性(好中球主体),非化膿性(リンパ球/形質細胞主体),胆汁性肝硬変(線維症)に分類される.これらは,病態自体が異なるのか,ある進行過程を表しているのか不明な点がある.診断は,針吸引生検 ,病理組織検査,培養によって行われる.治療は,抗生物質,免疫抑制剤,利胆剤を組み合わせて行われる.感染性肝障害の原因としては,ウイルス感染(FIP,FeLV),真菌感染(スポロトリクス症、ヒストプラスマ症、ブラストミセス症),寄生虫感染(肝吸虫)などがある. 肝臓のリンパ腫は,多中心型リンパ腫,腸原発のリンパ腫から転位したリンパ腫,肝原発のリンパ腫として起こる.肝原発のリンパ腫は,門脈領域から発生する傾向があり,次に肝小葉に浸潤する.治療はCOPプロトコールなどが使用されるが,その予後はその他のリンパ腫よりも悪い.
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猫の鼻の疾患 : 外科的考察
Theresa W. Fossum, T,H.
Am.. Anim.Hosp.Assoc.1999. Scientific Presentations of the 66th Annual
Meeting:211-214


猫の鼻疾患を診断するには,臨床症状(鼻汁,くしゃみ, 呼吸困難 ,呼吸器の異常な音,排泄物が両側性なのか片側性なのか)とそのヒストリー(ワクチン接種の有無,飼育環境,病気のヒストリー)が手助けになる.一般的には,若い猫ではウイルス疾患,異物,鼻咽頭ポリープと関連した鼻炎が多く,老猫は腫瘍が多いようである.急性症の原因には異物、外傷、感染等があり,慢性症には腫瘍とポリ-プ等がある.片側性の排泄を示す疾患には,ポリープ,腫瘍,異物が多く,両側性の排泄物には,腫瘍,感染症が多い. 診断方法としては,先ず胸部レントゲンと病変領域のリンパ節の吸引が行われ,転位の有無を評価する.次に,全身麻酔下で鼻腔, 口腔咽頭,喉頭を注意深く検査する(咽頭の尾側を観察するにはフレキシブなファイバースコープを使用する事がある).そして,病変部の横臥像,背腹像,開口した状態の腹背像,前鼻洞像,斜像をレントゲン撮影する.但し,早期の鼻の腫瘍は,炎症変化と同じ様な外観を呈するのでレントゲン上で区別するのは難しい(骨融解,軟部組織の密度の増加は腫瘍,細菌感染,炎症でも起こる).最後に,耳鏡,歯鏡,光ファイバ内視鏡を使用した鼻鏡検査によって鼻咽頭の尾側と鼻道を評価する.確定診断は,鼻腔洗浄または生検によって得られた検体の細胞診または組織学的検査によって行われる(著者は,アリゲーター鉗子,硬いポリプロピレン製の尿カテーテル,Sovereign カテーテルによる生検を推奨している).これらの方法で確定診断できないときには,試験切開をして生検を行う.  鼻の腫瘍の臨床症状は,くしゃみ,排泄物,鼻出血,神経症状などである.疫学的調査では,雄猫のほうが雌猫よりも腫瘍の発生率が高く,上皮系腫瘍,リンパ系腫瘍が多い.その転位率は低いと報告されていたが,最近の調査では120頭の犬のうち49頭に転位が確認されている.
鼻の腫瘍に対する治療法 −現在の治療法は,局所病変を直接コントロールすることである(呼吸状態の改善,鼻出血の減少など). その方法には,外科的切除,放射線療法と外科切除,放射線療法単独,化学療法,免疫療法凍結外科療法がある.しかしながら,それらの治療法の有効性の比較が困難であるが,鼻を切開して腫瘍を摘出する外科手術は,生存期間を延長していないようである.これは,腫瘍を完全切除できない事に起因するようである. 放射線療法は,鼻の腫瘍に対して最も有効な治療法であり,外科療法と組み合わせるべきであると思われるが,その評価が必要である.
 慢性の副鼻腔炎の原因には,ウイルス,クラミジア感染,細菌の二次感染,炎症性ポリープ,寄生虫,異物などがある.その内科的治療としては,培養と感受性試験に基づいて4-6週間抗生物質療法を続ける.もし治療後に再発したなら,篩骨の掻爬と鼻胴の切除を考慮すべきである.
 鼻咽頭の腫瘍性ポリープまたは炎症性ポリープは,鼻咽頭,耳管などにマスを形成する.その治療は,腹側骨膨大部切開(単独で適用される場合と外側外耳道切除と共に適用される場合とがある)が適応される.
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猫の抗真菌薬と真菌疾患
Taboada, J.
Am.. Anim.Hosp.Assoc.1999. Scientific Presentations of the 66th Annual
Meeting:226-229


猫に使用されている抗真菌薬には, 微生物由来の抗生物質(アンホテリシンB,グリセオフルビン),合成薬(アゾール誘導体,ヨウ化物,アフリラミニン誘導体,キチン合成阻害剤)がある.経口用アゾール系抗真菌薬:アゾール系抗真菌薬は,イミダゾール系(ケトコナゾール)と,トリアゾール系(イトラコナゾール)に分類される.ケトコナゾール (10-30mg/kg 2分割/BID)とイトラコナゾール(10mg/kg )は,食餌と一緒に投与することで吸収率が最大となる.ケトコナゾールとイトラコナゾールは,尿中,CSFへの移行性は低いが,中枢神経系,前立腺,眼真菌症の治療に良く反応する.
また,イトラコナゾールは,皮脂から皮膚に移行するが,皮脂濃度が,血漿濃度よりも5-10倍高いため,皮膚糸状菌,および他の真菌症の治療に適している.
フルコナゾールは,尿,脳脊髄液,涙液中に高濃度に分布し,血液-脳,血液-前立腺,血液-眼球関門を通過する.副作用は,主に胃腸障害,食欲不振,肝酵素の上昇などである.副作用発現時には,用量の分割,減量または食欲刺激剤(シクロヘプタジン,オキサゼパム)の投与をすると良い.
相互作用では,ケトコナゾールによるステロイド産生の抑制, サイクロスポリン,ジゴキシン,フェニトイン,スルフォニル尿素,ワルファリンなどの濃度を増加すると報告されている.
アンホテリシンB:毒性の感受性は犬よりも猫の方がより高くなっている.
その使用法は,0.1-0.4 mg/kg iv 3回/週であるが,腎毒性が強いので,5%ブドウ糖に混和して点滴したり,皮下投与法が静脈内注射の代わりに現在推奨されている.皮膚糸状菌症:グリセオフルビン(50 mg/kg),イトラコナゾール(10 mg/kg)に効果が見られた.グリセオフルビンは,イトラコナゾールよりも副作用発現率が高い.
特にFIV陽性猫では,骨髄抑制作用があるために,使用すべきでない.クリプトコックス症:アンホテリシンB、イトラコナゾール(50 mg/cat< 3,2 kg,100 mg/cat > 3.2kg)、フルコナゾール(50 mg/cat sid-bid),ケトコナゾール, MalikらのアンホテリシンBの皮下投与プロトコールに反応が見られている.
その他ヒストプラスマ症,コクシジオイデス症,ブラストミセス症,スポロトリクス症にも抗真菌剤が有効であった.
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猫の胸水
Fossum, T,H.
Am.. Anim.Hosp.Assoc.1999. Scientific Presentations of the 66th Annual
Meeting:207-211


胸水の原因には,
1)うっ血性心不全のような毛細管圧の上昇;
2)低アルブミン血症のような毛細管膠質浸透圧の減少;
3)毛細管の浸透性の亢進(炎症);
4)リンパ管の破壊
等がある.臨床家はその原因を診断して適切な治療を行うべきである.胸水の臨床症状は様々であるが,初期に確認される症状としては咳がある.身体検査では酸素吸入が必要な時があり, おおいをかけられた様な心音,胸部腹側の呼吸音の減少,心雑音,脈欠損、心頻拍,前胸部圧縮率の減少,腹部の膨満,脈絡網膜炎 ,外傷,発M等が確認されることがある. 診断としては,胸腔穿刺が治療を兼ね合わせて役立つ.特にレントゲン写真の前 に胸腔穿刺することは,呼吸抑制の可能性を減らす.ただし, 液体は「音響 窓」として働くので,エコー検査は多量の液体を採取する前に行うのが最も良い(前縦隔のマスを確認するために使pすることが多い).その他には,胸水の 色,混濁度,臭い,粒子状物質の有無の確認,細胞数,比重,総蛋白の測定,細 胞診を行う.そして,
1)炎症性浸出液と非炎症性浸出液の鑑別,
2)化膿性浸出液と非化膿性浸出液の鑑別,
3)腫瘍性細胞の有無
の確認を行う(特に,中皮細 胞は腫瘍細胞と鑑別するのが困難である).
出血性浸出液は,患者の呼吸がひどくおかされるまでその採取を避けるべきであり,外傷性の血胸が除外されたならば,凝固異常の可能性を精査すべきである.膿胸の場合、蛋白濃度3.5 gm/dl以上,混濁しており,細胞診では変性好中球が主体である.その原因は特発性のことが多い.治療は生理食塩水または乳酸リンゲル液による胸腔洗浄および細菌培養と感受性試験の結果に基づく抗生物質の全身投与である. 治療開始後3-4日で改善が認められない場合には, 外科手術 が示唆されることがある.
猫の乳び胸の原因には,外傷,縦隔腫瘍(リンパ腫、胸腺腫)、心筋症、犬糸状虫感染症があるが,多くの症例の原因は不明である(特発性乳糜胸).性差はないが,シャム猫に多いとの報告がある.最も多い臨床症状は呼吸困難であるが,初期の症状は咳である.診断は,エコー検査,レントゲン写真,胸水検査(胸水と血清のトリグリセライドとコレステロール値の比較.ラ胞診によるカイロミクロンの確認とリンパ球または好中球主体所見),静止後の観察(クリーム層の形成)によって行われる.乳び胸の治療は,主に内科療法であり, 浸出液が自然になくなるまで, 低脂肪食であるR/Dまたは自家製の食餌を与える.ベンゾピロン(ルチン)の投与によって乳糜の吸収を増加させることもある.外科治療では,胸管の結紮とシャント法の両方を推奨するが,現在その予後は悪い.
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猫の膵炎
Steiner,J.,M., Williams,D,A.,
Compend.Contin.Educ.Pract.Vet.1997.19.5


猫の膵臓障害の発生率は犬とほとんど同じでり,膵炎を急性または慢性,軽度または重度と分類することにより,その予後と病理学的変化が明瞭になる.膵炎の病理組織所見において見られる腺房細胞の空胞形成は酵素の合成されたものであり,膵炎は膵酵素の分泌の減少による外分泌不全が示唆されている. 生化学的機序では,リソゾーム酵素によるトリプシンの異常な膵臓内活性の結果, 全てのカスケードの活性化または肥満細胞の脱顆粒によって局所の炎症を起こす.さらにトリプシンによって活性化されたエラスターゼは,膵臓の毛細血管壁内のエラスチン変性,浮腫形成と膵組織の出血を起こす.同様に活性化されたフォスフォリパーゼA2は,細胞膜の障害,中枢神経系の 脱髄を引き起こす.そして,トリプシンと他の蛋白分解酵素によって細胞物質の蛋白の分解と消化を起こす.またトリプシンは,線維素系と同じ凝固系カスケードを活性化し,それによって播種血管内凝固症を引き起こすことがあり得る.最終的に, 多臓器障害を起こすことがある. また,遊離リパーゼは,膵臓の脂肪壊死の原因になりうる.
 猫の膵炎の原因は,ほとんど確認されていないが, 薬剤,外傷,外科手術,パルボウイルス感染症,トキソプラズマ感染症,ヘルペスウイルス1型感染症, 猫伝染性腹膜炎ウイルス感染症での報告または疑いがある.臨床症状は,特異性が無く,嗜眠,食欲不振,脱水などであった.診断は,血液化学検査におけるALTの上昇, 高ビリルビン血症,高コレステロール血症(2次的な脂肪肝を示唆している),血清アミラーゼと血清リパーゼの上昇(実験では確認されているが,自然発生ではこれらの酵素が数日で回復してしまうので,認められないことが多い),レントゲン検査における腹部頭側のコントラストの減少,小腸の部分的な拡張,胃,十二指腸,横行結腸の位置の変位,エコー検査における膵臓の腫大,膵組織のエコージェニックの増加,膵組織周囲の液体の蓄積,膵臓のマス, CT 検査,放射性免疫測定法による血清中の猫トリプシン様免疫反応の上昇等によって総合的に行われる.しかし, 現在,確定診断は膵臓生検による病理組織検査よってなされている.治療法は,原因療法,輸液療法,絶食とその後の胃造瘻チューブ等による栄養補給,鎮痛剤の投与,感染症がある時の抗生物質療法, ショック時のコルチコイド療法からなる.予後は、疾患の激しさ、膵臓の壊死の範囲、同時に起こる全身の合併症、持続期間等に左右される.
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猫の甲状腺機能亢進症の内科療法
Behred,E,N.
Compend.Contin.Educ.Pract.Vet.1999.21.3


甲状腺機能亢進症の治療方法には,外科療法と内科療法である抗甲状腺製剤療法と放射線ヨウ素療法(131I)がある. 抗甲状腺製剤は,外科治療または放射線ヨウ素療法が不可能な患者の長期治療,外科治療または放射線ヨウ素療法の前に患者の状態を改善するための短期治療,慢性腎疾患が予想される時の試験的治療として使用される.
メチマゾールは,抗甲状腺製剤の代表的薬剤であり,甲状腺ホルモンの合成を阻害して甲状腺の機能を回復,維持する.治療用量と維持量が猫の状態に合わせて(特に腎疾患)それぞれほぼ決まっており,適切なプロトコールがある. 副作用は18.3%で確認され, 食欲不振,嘔吐,嗜眠,顔と頚の表皮の剥離,出血,黄疸,重症筋無力症等がある.主な副作用は投薬開始後1カ月で徐々になくなるが,肝腫(嘔吐,黄疸,食欲不振など),血液学的変化(血小板減少,顆粒球減少,血小板機能低下症)が現れれば投薬を中止する.モニターとしては, 2-3週間毎に身体検査,血清T4濃度,CBC Cre,Pを測定すべきである.その他の抗甲状腺製剤には,メチマゾールよりも生物学的利用能が低いカルビマゾール,人の甲状腺機能亢進症で使用されているイポダート(効果と副作用などは,これからの調査結果を待つ必要がある),末梢でT4からT3への変換を阻害する薬剤であるプロピルチオウラシルがある.
 その他の薬剤として,放射線汚染等の危険があるために使用が制限されるが,放射性ヨウ素療法(131I)がある.放射性ヨウ素は甲状腺細胞の過形成細胞や腫瘍細胞に高濃度に集中してその細胞を破壊するので,猫の甲状腺機能亢進症に最も効果がある永続的な治療法である.特に異所性甲状腺組織の猫,悪性腫瘍の猫では適応となる.用量は,体重,臨床症状,甲状腺の大きさと数などを考慮して決める.投与経路には,静脈,皮下,経口投与があるが,それらの効果の違いは不明である.
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猫の鼻咽頭疾患:53症例の懐古調査
Allen,H,S.,Broussard,J.,Noone,K.
J Am Anim Hosp Assoc 1999;35:457-461.


今回53症例の鼻咽頭疾患を懐古調査したところ,鼻疾患を併発している症例が多く見られ,臨床症状も鼻疾患としての鼻の形の変化とくしゃみ,鼻咽頭疾患としてのいびきと声の変化であった.診断は鼻咽頭と鼻腔の生検とCT検査によってなされ,リンパ腫,炎症性ポリープなどが多かった.
鼻の形の変化,くしゃみ,いびき,声の変化がある猫では鼻咽頭疾患をも考慮すべきであり,診断には軟口蓋の指診,屈曲可能な内視鏡検査,CTスキャン検査,頭部レントゲン写真検査,デンタルミラーの使用の有無に限らない口腔内検査と生検が必要である.
またオーストラリアの報告やここニューヨークでもクリプトコッカスによる鼻咽頭疾患が報告されたいるが,今回の病理組織検査では確認されなかった.その診断には血清クリプトコッカス抗原と鼻汁の細胞診も必要である.
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猫の特発性血小板減少性紫斑病の1例
Garon,C,L.,Scott,M,A.,Selting,K,A.,Cohn,L,A. J Am Anim Hosp Assoc 1999;35:464-470.


去勢された11歳齢の在来種の猫に血尿,耳介と口腔粘膜の点状出血,膀胱穿刺後の腹部皮膚の斑状出血が見られた.重度の血小板減少症,末梢血の好中球による血小板貪食像,骨髄の巨核球による好中球の貪食,巨核球と好中球の付着を伴う巨核球の過形成が見られた(人為医療ではエンペリポレススと言われ,血小板造血亢進時に見られることがある).免疫抑制剤であるプレドニゾロン,サイクロフォスファマイド,サイクロスポリンに反応した.
 この症例はすでに輸血が行われており,血小板抗体などの免疫試験も利用できなかったが, 治療に対する反応と除外診断によって(薬物投与歴なし,ウイルス検査陰性, Erlichia canisとErlichia risticii 抗体価測定の結果陰性,腫瘍性疾患,心疾患,血栓とDICなし)特発性血小板減少性紫斑病と仮診断できた.
 また,初診時の血小板数が重度ではなく(85×103/μl),凝固検査における活性化凝固時間(ACT)と活性化部分トロンビン時間(APTT)の延長から,血小板の機能障害または凝固因子の欠損が疑われたが,その後に免疫抑制剤の治療によって再発が無いことから一時的な血小板の機能障害を伴っていたのだろう.
人為医療では抗リン脂質抗体(APA)と抗血小板抗体の測定,捕捉抗原検査(antigen capture assays)などが利用可能であるが,それらの検査結果,臨床症状,治療に対する反応と除外診断によって特発性血小板減少性紫斑病を診断している.
 猫の特発性血小板減少性紫斑病では特異的に診断可能な検査方法がない現在,臨床症状,血液検査,治療に対する反応と除外診断から免疫介在性血小板減少症を考慮し,原因および基礎疾患が証明されない場合に特発性血小板減少性紫斑病と診断される.
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Leukoerythroblastosis Normoblastemia in the and Cat
猫の白赤芽球症と正赤芽球症
Hammer, A,S., Maxey Wellman, M. J Am Anim Hosp Assoc 1999;35:471-473.


獣医医療における白赤芽球症という用語は(例えば,白赤芽球反応,白赤芽球性貧血とも表現される),末梢血において有核赤血球が見られ,幼若な骨髄細胞の数が増加した状態と定義される(今回は,有核赤血球数が100/μl以上または桿状核球が300/μl以下と定義した).正赤芽球症または後赤芽球症は,左方移動を伴わない有核赤血球数の増加と定義される(今回は,有核赤血球数が100/μl以上,桿状核球が300/μl以上と定義した).人為医療では,失血,溶血貧血,軟部悪性腫瘍,微細血栓症,一過性の低酸素症、骨髄壊死,骨髄増殖性疾患,尿毒症,心不全,顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の使用後の付随反応などにおいて白赤芽球症と正赤芽球症が見られている.猫における白赤芽球症と正赤芽球症に関連したデータは少ない.今回313頭の猫のうち6%の猫が,6カ月以上白赤芽球症または正赤芽球症を呈した.これらの血液学的異常と関連した疾患には,ヘモバルトネラ症,肝リピドーシス,外傷,ウイルス感染,細菌感染,骨髄増殖性疾患と血管肉腫などがあった.それらのメカニズムは,脾臓の収縮,骨髄からの受動的放出,赤血球の造血障害,正常な骨髄の微細環境の破壊,ストレスに対する骨髄反応とサイトカインの作用などが考えられている.白赤芽球症または正赤芽球症は,特異的な症状のない猫を診断するのに手助けになるであろう.
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Paraneo plastic Th rom bocytosis-1 nd uced Systemic Thromboembolism in a Cat
猫における全身性血栓症を誘発した腫瘍随伴性血小板増加症
J Am Anim Hosp Assoc 1999;35:483-6.


6歳齢の猫に大動脈遠位部の血栓塞栓症が見られたが,検査結果から心疾患は除外された.胸部レントゲン写真により腫瘍と一致した多数の肺病変が認められ,肺病変の組織病理学検査によって気管肺胞腺癌と診断された.シンチグラフ画像では,左腎近くの遠位の大動脈が急に閉塞していた.重度の血小板増加症(1,026xl03/μ1; 正常範囲, 300 -700 xl03/μ1)と巨核球の過形成が確認され,他の血小板増加症の原因が除外されたので,腫瘍随伴性血小板増加症と診断した.剖検所見として,大動脈三分岐点における動脈血栓症,ネフローゼ症候群が確認された.心臓の構造的変化は,見られなかった.
腫瘍随伴性血小板血増加症の原因は不明であるが,今回の症例では腫瘍によるトロンボポイエチンまたはトロンボポイエチン様物質の過剰な産生,鉄欠乏性貧血の関与,エピネフリンによる作用,血小板減少症によるリバンド反応などが考えれた.そして,悪性腫瘍とネフローゼ症候群(抗トロンビン3欠乏)による血小板機能亢進症が,猫にも考慮されるべきである.
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